怪談話CASE2:立花香織の場合-1
私は立花香織(たちばな:かおり)。
普通な街に住み、普通な家庭を営む、普通の専業主婦。そんな平凡な私に、常識外れな体験が訪れた。
第2叫--「あいさつ」--
閑静な住宅街は、今日もひっそりと佇んでいる。
水を撒くおばあさんや、近所の井戸端会議。どこでも見られる光景だ。
「行ってらっしゃいあなた♪」
愛すべき私の夫、敬太を元気に会社へと送り出す。
「あぁ、行ってくるよ。今日は早いと思うから。」
「うん。頑張って〜」
ひらひらと手を振り、私の一日が始まった。
「ふぅ、洗い物と掃除しなくちゃ。」
のろのろと家の中に戻る。まぁこれが仕事だし。
「あ、今日はゴミの日だったっけ?」
主婦にとっては大事なことを思いだし、もう一度外に出る。
『香織さんおはようございます〜♪』
ゴミ捨て場には、いつも井戸端会議している奥様方。
「おはようございます〜」
『ねぇねぇ香織さん?ちょっと聞いてよ!!』
…まただ。
いつもこんな感じで話に巻き込まれる。この人達は喋るのが早くて…。
適当に相槌を打って、その場を後にした。
『おはようございます。』
いきなり前方から声がして、ふと下を見ると、腰を曲げ杖で立っているお婆さんがいた。
(あ、あれ?こんなお婆さん近所に居たっけ?まぁ、いいか…。)
「おはようございます。」
とりあえずあいさつすると、お婆さんは何も言わず行ってしまった。
「なんなんだろ…新しく引っ越してきたのかな?」
−−これが、私の不思議な体験の始まりだった。
時は変わり午後9時。
「ねぇ、敬太。ここらへんにちいさいお婆さん住んでたっけ?」
「ん〜、見たことないなぁ。」
夕食の後の、ビールと枝豆を摘みながら言う。
「ふーん…やっぱり…。」
「そのお婆さんがどうしたっつーの?」
「なんか今日あいさつされちゃった。」
「まぁ、迷惑掛からなきゃ大丈夫だよ。じゃぁ俺明日早いからさ〜。」
「うん、おやすみ。」
なんだろう?なんとなく気になるお婆さんだな。
「…私も寝よ。」