象と鎖〜やるか、やらないか〜-1
とあるサーカスに子象が引き取られてきた。
名前はセーロ。
セーロはホームシックで毎日泣いていた。
懐かしの故郷へ逃げ出したいと毎日考えていた。
セーロを逃がさないためにサーカスのオーナーのジョナサンはセーロの片脚を鎖で縛り、地面に杭を射して固定した。
もちろんセーロは必死に逃げようと藻掻く。
しかし鎖は解けなかった。杭に邪魔をされてセーロの脚が鎖に擦れて傷んだ。
それでもセーロは諦めず毎日毎日藻掻いた。
脚から血は激しく流れ墜ちた。
セーロは悲鳴をあげた。
助けを呼んでも誰も来ない。
血だらけの脚をそれでもひきずりセーロは自由を求めた。
自由を求めながら傷みに耐えた。
そんな日々が続き月日は流れ、セーロはもはや子象ではなかった。
いつのまにか逃げ出すことをしなくなった。
いや、しなくなったんじゃない。諦めたんだ。
セーロの中の二つの葛藤。
自由を求める心と諦め。
学習能力がセーロに
「もう無理だ。」
と囁いた。
そうだよ。痛いだけだ。できっこない。
こんなに脚は傷だらけなのに、杭は抜けやしなかった。
ぼくにはできない。
セーロの脚には未だに鎖がつながれている。見えない鎖が。
杭は大きくなったセーロなら簡単に抜けるはずだった。
だけど傷みが諦めがセーロを不信にさせた。
自分を信じてあげられなかった。
やればできるのに……
できないって誰が決めた。
自分の線を誰が引いた。
全部君自身なんだよ。
君の心にも同じ鎖や杭が巻き付き刺さって邪魔をしている。
過小評価するな。
やればできる。
やれば。
やりさえすれば
君は可能性の塊だから。