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『HIDDEN AFFAIR』
【学園物 官能小説】

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『HIDDEN AFFAIR 2nd secret』-1

『HIDDENAFFAIR』
「ふぅ、やれやれ」
雛子(ひなこ)はズレた眼鏡の銀フレームを人差し指で押し上げ、額を伝わる汗を拭いた。
空いたスペースにゆっくりと腰をおろす。そうしないと、挨が舞うからだ。
ここらで小休止。

朝倉雛子は御年24。ある高校の司書として勤務している。というわけで、彼女がいるココ、図書室が彼女のテリトリーだ。正確に言うと、普通の校舎とは別棟となっている図書館の中の書庫にいる。
彼女は今、その書庫の整理をしているのだ。
そこには学校側が購読している各社の新聞紙、生徒の文集、また古くなった書籍等が欄列している。
そんな業務は図書委員の生徒にでもやらせればいいのだが、本好きが高じて司書となった彼女の人柄、また几帳面な性格のため、人の手を借りるのは忍びなかった。
しかし、やはり肉体労働。一人でもくもくと従事していると疲れが出るのも早い。
「あとは今月分の新聞まとめて…」
溜息をついて天井を見上げる。
図書館棟自体は二階建てだが、一階を入口にしてあるこの書庫は吹き抜けの三階建てになっている。図書館棟の高さに合わせているため、その分天井は低い。
また各フロアに小窓が一つしか無いために、昼間でも暗く、気休めの蛍光灯が心持ち頼りない。陽が当たらないのでいつも湿気を帯びている。
雛子はその三階にいた。こんな陰気な場所だが、雛子にはお気に入りのスペースだ。まるで隠れ家の様でどきどきする。そして何より忘れられないエピソードがここにはある。

「さて、もうひとふんばりすっか」
意気込んで立ち上がると、階下の入口の引き戸が開く音がした。
「せんせーい。朝倉先生、いますかー?」
この声は、
「はーい、三階だよー。結城くん?」
「そーでーす」
その声の持ち主は入口を閉めると、パイプと鉄板作りの頼りない階段を駆け上がって来た。
「やっぱりココだった」
「どうしたの?」
姿を見せたのは長身の男子生徒。三年で図書委員長の結城湊(みなと)だった。
「書籍購入の希望アンケートの紙、先生の机の上に置いといた」
「ありがとう」
湊は一見武骨そうに見えて、図書委員長なんて肩書は不似合いだが、これがなかなかどうしてうまく働いてくれる。実際、自分から委員長に立候補したくらいだから、その意気込みが満面に表れている。かといって、本好きとかそういうわけでもないようだが、雛子の仕事もよく手伝ってくれた。
「なんだ。書庫整理なら俺も手伝うのにさ」
「一人じゃ出来ないわけじゃないもの。大丈夫よ」
「そんなこといってさぁ、もう七時前だぜ」
「え、あ。ほんとだ。気付かなかった」
「かー、これだよ」
湊は苦笑している。
「ホントに好きなんだな、ココ。変わってますよね」
時にタメ口の中に敬語が混在するのは、彼なりに気遣いながら話しているからだろうが、普段話し慣れてないのかどうもしっくりこない。
雛子にはそれが時々可笑しくもあり、結城を憎めないと思う。
「そういう結城君はこんな時間まで部活?」
彼はよく見ればジャージ姿だった。
「今終わったとこ。アンケート用紙、部活前に持ってこうと思ったんだけどさ、どうせ先生はこの時間までいるかなって」
湊はバドミントン部だ。有望選手で今度の県予選には期待が集まっている。
「もうそろそろ引き揚げなよ。まっくらだぜ」
「そうね、続きは明日にしよ」
「明日は俺も手伝うよ」
「いいわよ。あなたは部活があるでしょ」
そう言うと、湊はがっかりした顔つきになっていた。
身体つきはしっかりしているのに、顔はどこかあどけない。そのアンバランスさに思わず笑ってしまう。
「ひでー…、先生」
「ごめんなさい。だって」
鈴を転がすような笑い声。
「じゃあ、暇な時でいいわ。手伝って。部活に支障がないようだったらいいわよ」
湊の顔にたちまち光が差したような明るさが戻った。
−可愛い。
まるで従順な仔犬の様。雛子はそう感じた。
「しかし、アレだよね。こんな真っ暗なとこいて恐くない?」
空いたスペースに湊は座り込む。
「そんなことないわ。あたし、ココが昔から好きなんだから」
「昔から?」
「ああ、言ってなかったわね。あたし、この学校の卒業生なのよ」
「そうなんだ!?知らなかった」
雛子は卒業文集の並んである棚の前で微笑む。
「一年の頃からずっと図書委員で−、学校司書の資格を取って、この学校に赴任して来たときは嬉しかったなぁ。またここにいられるなんて」
倒れていた文集を立て直しながら話す。
「ここにはたくさん思い出あるから」
にっこりと湊に微笑みかける。


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