第十一章 裏切り-8
ハッとしたけど私、握り返していた。
すると男も更に強い力で肩を抱いてくれる。
まるで、言葉の無い会話を二人で交わしているよう。
(ど、どうしよう・・・)
心臓がドキドキする。
自分の大胆な振る舞いに驚いている。
いつの間にか二人、ピッタリと寄り添う形になっていた。
そう、まるで恋人同士のように。
見上げると男の人の熱い視線が絡みついてきた。
熱い気持ちがこみ上げてくる。
(わ、わたし・・・何を・・・?)
どうしてしまったのかしら?
夫以外の男と抱き合っている。
会ったばかりの見知らぬ人なのに。
「あっあっ・・おお・・・・おああ・・・」
裕君の声が聞こえる。
「ああっ・・・す、凄いぃ・・・」
夫の変わり果てた姿が、心を切なくする。
(でも・・・)
何か、違う。
さっきまでとは全く別な感情が湧き上がってくるのに気がついたの。
ギュッと、男の手を握り締めた。
直ぐに握り返してくる感触が、私の心を励ますように鼓舞してくれる。