第十一章 裏切り-19
(わ、わた・・・し・・・?)
キスしている。
夫以外の男と。
うっすら目を開けると見知らぬ顔がいた。
裕君ではない中年の男。
(ああ・・・そ、そんな・・・)
その事実が心に火を付ける。
「んんふっ・・・んぐぅ・・・」
私の舌はまるで当然の如く相手の口に飲み込まれていった。
ケダモノの味がする。
一瞬、裕君の顔が見えた。
愕然とした表情はショックの大きさを物語っていた。
(裕・・・君・・・・)
夫が見ている。
(なのに、私・・・わた、し・・・)
キス、している。
(ああ・・・・いやらしい・・・)
頭の隅で何かが弾けた。
いたぶられ抑圧された続けた私の理性が、崩壊した瞬間だった。