第十一章 裏切り-17
「可哀相に・・・」
何かが頬に触れた。
ゴツゴツした肌触りが包むようにして撫でる。
「ごめん・・・ごめんね・・・」
子供をあやすような言葉と共に柔らかな感触が涙を優しく拭う。
「ああ・・・あ・・・」
霞む視界に男がいた。
「許して、下さい・・・」
熱い息がかかる。
唇が、触れた。
私は抵抗もせず頬を預けていた。
暖かい。
「う・・・ぅ・・・」
小さなキスを繰り返してくる。
何度も。
まるで、雨のよう。
(ああ・・・)
温もりが、私を包む。
空っぽだった心が満たされていく。
男が、いる。
男が、いてくれる。