第十一章 裏切り-16
(ひどい・・・ひどい、裕君・・・)
生まれて初めて、夫を憎んだ。
喧嘩はしたけどこんな気持ちになった事は今まで無かった。
裏切り。
(そう、これは裏切りよ・・・)
妻である私の目の前で射精するなんて。
これ程の屈辱があるだろうか。
「ああっ・・あっあっ・・・ひぃぃ・・・」
女の頭を掻きむしりながら余韻に浸っている。
涙が頬を伝う。
二つ、三つ。
それは泉に投げた石のように深い悲しみを心に広げていく。
寂しさが襲う。
気が狂いそう。
(い、いやぁ・・・)
声にならないものを叫んでいた。
(誰か、助けて・・・)