第十一章 裏切り-11
(だ、だって・・・)
恥ずかしくってこの人の顔、見られなかったから。
「ありがとう・・・」
熱い息が囁く。
「嬉しい・・貴方は優しい人だ・・・」
短いフレーズを繋げていく。
「私の無理な願いを聞いてくれたばかりではなく、
こんな・・・」
男は力を緩めると、私の指先をなぞるように優しく触る。
「素敵な愛撫をしてくれる・・・」
「あっ・・・」
私の指を誘導していく。
コックに巻きつくように。
(ああ・・すご・・い・・・)
浮き出た血管の感触が指先に伝わってくる。
「おおお・・・・」
声を絞り出している。
「ああ・・・気持ちいい・・」
(大げさな言い方・・・)
でも少しも変に感じない。
返って私の恥ずかしい気持ちを、ぬぐい去ってくれるような気がする。