第九章 予期せぬ出来事-6
「あっ・・・?」
顔を向けると直ぐ横に男の顔を見つけた。
別にハンサムでもない。
40台半ばであろうか、
「まさに中年」といった風情。
ハッキリ言って
「おじさん」と呼ぶにふさわしい顔。
「お気を悪くさせたでしょう、許して下さい」
馬鹿丁寧な口調は妙に紳士的だったけど、よく見るとその人、裸だったんです。
ぽっこりと膨らんだ下腹の下には、黒々としたペニスが反り返っている。
(キャー・・・)
叫びそうになった声を飲み込んだ。
そのおぞましい物に視線が釘付けになってしまった。
(だ、だって・・・)
本当に頭が混乱して何が何だかもう、分からないんですもの。
愛する夫は見知らぬ女に犯され悲鳴を上げているし、私が今まで甘えて肩を抱かれていた男が他人で・・・・。
しかも・・・全裸だなんて。
(し、信じられない・・・
これ・・・夢なんだわ、きっと)
ショックの連続が取り乱す余裕すら奪っていく。
私、相手の顔を見つめたまま固まってしまったんです。
身体に力が入らない。
すると、その人、私の事を見つめ返してきたの。
笑みを浮かべている。
(な、なに・・・この人?)
妙に落ち着いている。
(こ、こんな状況なのに・・・)
男の図々しさに呆れてしまった。