第四章 喧嘩-1
第四章 喧嘩
映見は僕の首にしがみつくようにして泣いていた。
繰り返す嗚咽に細い肩が震えている。
(しまった・・・)
僕は心の中で舌打ちをした。
せっかく、うまくいっていたのに。
もう少しだった筈だ。
(隣の男め、余計な事を言いやがって・・・)
僕はカーテン越しに恨みをこめて睨んだ。
「仕方がない・・・」
半ば諦めかけた僕は、ため息混じりに言った。
「帰ろう、映見・・・」
優しく耳元で囁きながらギュッと妻を抱いてあげた。
「これだけでも結構いい思い出になりそうだし」
自分に言い聞かせるように言葉を続けた。
「ゴメンね・・・」
泣きはらした目を無理に開けて映見は言った。
「でも、イヤなの・・・恥ずかしいの・・・」
そして僕の胸に顔を押しつけるように埋めた。
「僕だって・・・ゴメンな、映見・・・」
二人、抱き合いながら互いの温もりを感じていた。