第四章 喧嘩-2
(これで、良かったのかもしれない・・・)
素直にそう思った。
僕達の会話を聞いていたのだろうか、隣も静かになっていた。
喧嘩した気まずい雰囲気を察したのかもしれない。
(シラケさせちゃったかなぁ・・・)
さっきの怒りも忘れて、僕は会った事もない隣人にすまない気持ちになった。
向こうのせいじゃない。
場違いな場所に来た僕らがいけないんだ。
まるでスワッピングのようにお互いの痴態に興奮するのが、この店の「売り」なんだから。
普通の同伴喫茶よりも一歩進んだコンセプトらしい。
「そういう種類の客」ばかりが集まる店なんだ。
僕も少しは期待していたんだけれど。
しかし、それも考えすぎだと直ぐに悟った。
暫くすると、再び曇った声が聞こえてきたからだった。
「ああっ・・ああああ・・・」
(そ、そうか・・・)
僕は思わず笑みを浮かべてしまった。
おそらくこんなケースは何度もあったに違いない。
あの二人にとっては僕達が、居さえすればいいんだ。
見られているのが快感なのだろう。
僕達が帰る前に派手なショーを展開するらしい。
僕もさっきほどは興奮せずにカーテン越しにみる事が出来そうな気がした。
シラケさせたお詫びに見るだけでも暫く付き合ってあげようかと思った。
少し位なら映見も許してくれるだろう。