第三章 抱擁-4
「や、やめ・・・て・・・裕君・・・」
懸命に絞り出す声を無視するように、指の動きが早くなっていく。
「ああっー・・・はぁっ・・・はっはっ・・・」
飲み込もうとする息が益々荒くなっていく。
抵抗する力が抜けていく。
(ダ、ダメェ・・・)
「ほう・・お隣さんも始めたらしい・・・」
男の声が聞こえた。
瞬間、私の理性が呼び戻されたんです。
「い、いやぁ・・・」
私は思わず声を出してしまった。
「恥ずかしいよぉ・・・裕君・・・やめてぇ」
その声が余りにも大きかったのか、夫は動きを止めてくれた。
「いやっ・・こんなのぉ・・・もう、やだぁ」
涙が溢れてくる。
惨めな思いが心に充満していた。
(こ、こんな事でしか・・・)
私の旦那様は興奮しないのだろうか。
「うっ・・ううっ・・・」
私の想いが、涙と共に裕君のシャツに染み込んでいく。
(ひどい、裕君・・・・)
悔しさと憤りが頭の中に充満してグルグル廻っていた。