女らしく【12】『潜入と調査と前編』-1
夏が終わった。
秋と共に二学期が始まった。
にも関わらず残暑はまだまだ厳しく、そしている筈の無い人物が寮にいる。
「マコトちゃん♪何処行くの?」
「学園長のところです。何か話があるなんそうで」
そう夏休みまでいる筈だった撫子さんである。
何故なら八月三十一日の夜…
『重大発表しま〜す♪この九条撫子、明日九月一日よりこの学園の寮母として就任致します!』
と満面の笑みを零し、ビシッと敬礼をしていた。
もちろん…オレ達が驚かなかったわけが無い。
大和なんか気絶しかけていた。
この話題はひとまず置いておこう。
自分でも言った通り、学園長がオレに話があるようだ。
「失礼します」
重厚な作りの理事長室の扉を開く。何故学園長なのに理事長室なのかということは過去の話を見直してくれ。
「突然ごめんなさいね」
「少し遅いですわね、マコト」
「アレ?奏も呼ばれてたのか?」
いつも通り、黒い服を着た奏が学園長の前に立っていた。
「話ってのはね、今度の実習のことなんだけど、普段とは違うことをしてもらおうと思うの」
耳にかかる赤い髪を優雅な仕草でかきあげる。
普段と違うこと?
「そう。テーマは潜入、そして調査。聖キリエ女学院って知ってるかな?」
聖キリエ女学院…
それは有名実業家や政治家の子女が数多く通う生粋のお嬢様学校。
オレとは完全に縁のない世界。
「この女学院がどうしたんですの?」
「実はね、事件が起こってるらしいの。けど上の組織はこういう小さな事件には手を出さない。だけど苦しんでいる人達がいるなら助けてあげたいでしょ?」
つまり、オレ達パートナー四人で解決してこいということですか。
「その通り。でも一つだけ間違いが」
間違い?
「聖キリエ女学院は女子高よ。九条君と安倍君は入れないから、貴女達二人で行ってきてほしいの」
奏と二人ですか!
「どうしても嫌ならいいんだけど…」
「やりますわ」
奏が瞳に迷いのない真っ直ぐな光が宿る。
「まあ…義を見てせざるは勇なきなりですかね、やります」
もちろんオレの目にもだが。
「ありがとう♪じゃあ早速明日からよろしくお願いね♪」
「「はい!!」」
そう言って退室した時…
「あっ…そうだった。向こうでは向こうの寮に入ってもらうから」
学園長はあっけらかんと言い放った。
えっ…つまり実習中は大和に会えないんですか!?
その言葉を遮る様に重厚な扉は重々しく閉じた。