女らしく【12】『潜入と調査と前編』-3
「あの!今、いいでしょうか?」
さっきの奴とは違うのが右手から迫ってくる。
やばいと思い、反対方向へ行こうとするも…
「すみません!マコト先輩!お話があるんです!!」
また別の奴が…
逃げ場無し…
どうすれば…そうだ…
ガチャッ!
窓の鍵を外し、急いで開ける。
滑らかな動作で縁に手を掛け、飛び下りる!
幸いにも二階と言えどもそんなに高さは無く、下は柔らかな芝生。武術で培った受身で身体への衝撃を緩和する。
「きゃああああ♪カッコいい♪♪」
黄色い悲鳴が上がるがそんなもんは無視!
素早く立上がり逃げる。ラッキーなことに咎める教師はおらず、何とか逃げれた…
終了の鐘が鳴り響く。
一日の授業も終わり寮の自分の部屋へと戻る。
夕食も食べ、消灯時間まで残り一時間。
「はぁ…」
重い溜め息が自然と口から出ていく。
「マコト、お疲れ様ですわ」
奏が苦笑しながら言った。
「聞いてくれよ奏…此所…詩乃だらけだよ……」
初日に誰かに似ていると思っていたが、視線がみな詩乃だった。
詩乃ノイローゼになりそうだ…
「ほんとにこういうことってあるんだな…帰りてえ…」
帰りたい…
大和に会いたい…
大和…今何してんだろう…
オレのこと考えてるかな…
浮気なんかしてないよなぁ…
「此所に来てる目的を忘れないでもらいたいですわ」
「分かってるよ…どんな感じだ?」
周りを確認し、鍵をかける。
「今までの被害は21件。いずれも人間関係などはバラバラ、目立った共通点は無し…」
「被害ってのは?」
「始めの内は軽いものですわ。視線を感じたり、手足を引っ張られたり…でも少しずつエスカレートしてきてますわね。最近では夜中に首を絞められたり、酷いものでは刃物の様な物で刺されたりしてますわ」
「刃物!?大丈夫なのか?」
「命に別状はありませんわ」
手帳を捲りながら情報を確認していく。
「今言った被害のほとんどは被害者が一人っきりのとき……とりあえずこれぐらいですわね…」
手帳をパタンっと閉じる。
まだ情報が足りねえか……
「…もちっと様子見か…」
ベッドに横になり、天井を仰ぎ見る。部屋にあるのはクローゼットと机とベッドが一人一つ与えられているのみ。