『娼婦。』-1
少し短めの髪を白に近い金髪に染め、だけど、眉は黒いまま、それにピンクのぽってりとした小さな唇を持った、こんな私のコトを人々は“淫乱”って呼ぶ。
だって、仕方ないじゃない。ヤる事が唯一の愛の形だって思っていたんだから……。
『みく』
低い声であの人が名前を呼ぶ。私はソレを聞く度に泣きたくなるくらい、切なくなる。
『みく』
あの人が名前を呼んでくれるのは、つながる時だけ。今だけ。
それ以上、聞きたくなくて、私はあの人の頭に手を回して唇をふさぐ。
『ん……』
短い髪が私の手に、指に触れる。
最近切った髪の毛。彼女の趣味。私は長い方が好きだった。
髪をなでていた手を止めて、軽く髪の毛をひっぱる。
『痛いよ。み……』
あの人は唇を離して、抗議と共に、また私の名前を呼ぼうとする。
私は再び唇で唇をふさぐ。
――娼婦ってキスしちゃいけないんだっけ。
ふと、どうでもいいことが頭の中をよぎる。
私は娼婦。
何も知らなかった私を抱いた時、あの人には既に彼女がいた。未だ続いている幸せな彼女。
『どうした?何、笑ってんだ?』
気付かないうちに私は笑っていたらしい。
ごまかしの笑いを浮かべて、あの人のズボンのチャックに手をかける。
もう固く勃ちあがったモノを私はゆっくり舐める。下から上へ。
あの人が教えてくれた通り。幼かった私にはあの人しかいなかった。あの人が喜んでくれるから、私は一生懸命覚えた。
『上手になったな……自分のもいじってごらん』
私は下に手を持っていき、言われた通りにいじる。
くちゅくちゅ……。
舐める音といじっている音が同時に部屋の中に響く。
『もう濡らしているのかい?淫乱だな』
――そう育てたのは一体、誰?
そんなコトを思いながら、私は口を開けて、んむっとモノを口の中に入れる。ちろちろと舌で尿道を刺激する。
『くっ……』
あの人が顔を歪める。私は少しだけ優越感を抱く。
いろんな男にフェラが上手いなと、時には嘲りを含んだ声色で言われた。
どんな風に言われようと私には関係なかった。だってあの人じゃないから。
あの人は私を大切に扱ってくれる。だけど、愛情だけはくれなかった。彼女に与えてしまっていた。
寂しくて、寂しくて、私はいろんな男と寝た。その時だけでも、好き、と言って欲しかった。でも、寂しさは埋まらなかった。
男は私の上を素通りしていくだけ……。