第七十八章 王宮の平和-1
第七十八章 王宮の平和
「おーい、その木材はこっちだっー・・・」
活気のある声が飛び交っている。
広大な城の庭園に人が群がっている。
先日の雷で崩壊した教会が壊され、新しい建物の建設が進められていた。
植栽の迷路も取り払われ、幾つかの施設と共に親しみやすい風景に変えられていく。
「寒くないかい・・・?」
「ううん、もう大丈夫・・・」
夫の言葉に嬉しそうに答えたルナは、肩に廻された腕を取り身体をあずけるのだった。
二人は感慨深げに工事を見ていた。
城のバルコニーには秋の日差しが差し込み、小鳥達が美しいさえずりを奏でていた。
「ディオン・・・」
「ん・・・・何・・・・?」
妻の甘えるような声に男は優しく聞いた。
「ううん・・・」
はにかむように微笑んだルナは、夫の逞しい胸に頬を摺り寄せて囁いている。
「ただ・・・・」
金色の瞳が潤んでいた。
「呼んでみたかったの・・・」
「ルナ・・・・」
口付けに言葉は必要なかった。
小鳥達の歌が二人を祝福している。