第七十八章 王宮の平和-3
あの日。
崩れる教会の中でルナは理解したのだ。
悟りではない。
全ての事実だった。
アズートの怨念。
母への罠。
捕われた母の心。
無残に弄ばれ、ルナ達をも巻き込んだ狂宴。
どす黒い欲情。
それは心の奥底に潜む本能かもしれない。
母とルナを襲った悪魔の野望は、巧妙に心の隙間をついて操っていった。
ディオンとの愛がその呪縛を解こうとも、聖堂に残ったアズートの執念が許さなかった。
永遠に消えはしないのだ。
ルナ達が犯した罪は記憶からぬぐう事なく、一生苦しめるだろう。
それから逃れる事は出来ない。
全ては事実なのだから。
前向きに受け止め闘うしかないのである。
ジュームの精霊達は、そう言いたかったのかもしれない。
自分達自身の力で克服する事を。