第七十七章 浄化-1
第七十七章 浄化
鋭い閃光が走ったかと思うと突然、ガラガラと壁や天井が崩れ落ちてきた。
「ルナ様っー・・・」
ドザリが叫び声と共に身体を覆いかぶさせ、ルナを守るように瓦礫の下敷きになった。
閃光の眩しさが、ルナの視界に闇を広げていく。
そのまま意識を失ったルナは黒い海の中を漂っていた。
何も感じない。
今まで襲った不条理な切なさが嘘のように消えていた。
閃光が意識を、ルナの過去の全てを消してくれたのかもしれない。
それは、何とも言えない清らかな愛でルナを包んでくれていた。
憎しみと怨念。
哀れみと憧れ。
あせりと欲望。
人が持つ心の姿の全てに翻弄されていた。
自分ではどうする事も出来ない運命。
それに逆らう事も受け入れる事も出来なかった。
苦しみが増す程に官能が強くなった。
だが欲情の海に漂う事も許されない。
そんな五年間だった。
ディオンとの愛が。
母から譲り受けたジュームの血が。
ルナを悪魔の呪縛から守り、解き放ってくれた筈なのに。
心に植えつけられた暗黒の欲望は完全に消えてはいなかったのだ。