予想外な痴漢犯人-4
「公平君のクラスの副担任になるなんて本当びっくりしたわ」
公平は相変わらずじっと下を向いたままだ。
緊張をほぐそうと杏奈はよもやま話を続けることにした。
「この学校でもサッカー部で活躍してるそうね、凄いわ」
「・・・・・・」
「勉強のほうも相変わらずみたいだけどね」
「・・・・・・・」
「女の子にはずいぶん人気があるみたいだけど、そっちの勉強は熱心なのね」
「・・・・そんなことないよ」
「噂によれば、1年の可愛い系の女子マネージャーから告白されて付き合っているそうね」
ここで初めて公平が顔をあげて杏奈と視線を合わせ、
「違う!告られたのはホントだけどOKはしてない!」
と強い口調で否定すると、しまった、というような表情をして視線をティーカップに再び落とした。
「やっぱりモテるんじゃない」
「・・・・・・・・」
「それなのに、どうして今朝あんなことしたの?」
「・・・・・・・・」
再び黙り込んでしまう公平。
「ああいうことをされると女の子はすごく傷つくのよ」
「それに今は痴漢の取り締まりは凄く厳しいから、私じゃなかったら大変なことになっていたわよ」
「・・・・・・・・」
「女の子の身体に興味があるの?」
「・・・・・・・・・・」
「公平君も年頃の男の子だから気持ちはわかるけれど、そういうのは恋人同士じゃないと。マネージャーの女の子、美咲ちゃんだっけ?一度ちゃんと付き合ってみたらどうかしら?ちょっと派手なところが気になるけど、明るくて可愛い子じゃないの」
「・・・・・・・・・・」
「先生としてはこんなこと言ったらいけないのかもしれないけれど、不純異性交遊はいけないとかいう時代でもないし」
「・・・・・・・・・・」
「どうかしら?公平君?」
杏奈としては、先生としての立場をやや逸脱しながらも伯母としての立場も込めて上手く話したつもりだった。しかし思わぬ反撃の矢が3本連続して公平から放たれる。
「じゃあ!杏奈伯母さんは、俺が美咲を孕ませて伯母さんと同じように高校生で赤ちゃん産ませて結婚してもいいっていうんだ?」
「そ、それは・・・」
「そういうことは好きな人とするよう昔俺に言ったよね?」
「そ、そうね」
「俺は杏奈伯母さんのこと大好きだからいいんだよね?」
「そ、それはダメよ。わたしは公平君のことそういう対象として見てないわ。だから、今朝みたいなことされても気持ち悪いだけよ。もうああいうことはやめなさい、いいわね?」
自分が16歳で子供を産んだことを指摘され劣勢に立たされる杏奈だったが、大人の立場から強引に話をまとめ立ち上がろうとする。その杏奈を更なるハードパンチが襲い動きを止めてしまう。
「おばさんが痴漢を悦んでたこと、俺は知ってる!」
「え、な、なにを言い出すのっ!?」
図星を差され動揺する杏奈。