第五十九章 蘇る悪夢2-7
(司教・・・様・・・・)
今、司教様に抱かれている。
清めてくださっている。
「んふ・・うれ・・・しい・・・」
幸福感がルナを包んでいた。
ずっと以前から待ち望んでいた気がした。
「ルナ・・・・んぐ・・・うふぅっ」
「んっ・・・んはぁっ・・司教様ぁ」
二人は恋人同士のように互いの名を囁きながら唇を、舌を絡めあっている。
いつしかルナの両腕はアズートの背中に伸び、さ迷うように泳いでいた。
ディオンはマチルダと共に見つめながら、何か熱いものが込み上げてくるのだった。
「ル・・・ナ・・・」
しかしその目は遠くを見るように、虚ろな灰色に染まっていた。
それは嫉妬ではない。
最愛の恋人が目の前で司教と愛し合っているというのに、不思議に怒りを感じなかった。
むしろ嬉しそうに唇を預けるルナの姿に、笑みさえこぼれてくるのだった。
だが、ふと目が合った恋人の瞳の光が一瞬ではあるが、ルナに声を出させた。
「ディ・・・オン・・・・」
その時ディオンの心に暗雲が漂い、切ない感情が湧いた。