第五十九章 蘇る悪夢2-4
「ワシの目を見るのじゃ・・・」
老人の灰色の瞳に見つめられると、急に心が軽くなる気がした。
「司教・・・様・・・」
安心した気持ちで、その名を口にした。
「私・・・司教様に会いに・・来た・・・」
それが、アズートから心に植え付けられた偽りの内容だとも知らずに。
「そうじゃ、ルナ・・・・」
アズートは妖術で人の記憶をすり替え、操作する。
あたかも、本人の意思の如く。
「よく思い出したな、ルナ・・・。
お前は美しくなった」
ルナは戸惑いながらも、笑みを浮かべた。
嬉しかった。
何故か、そう思えたのだ。
「お前も母と同様に清めてやろう・・・。
良いな、ルナ・・・?」
司教の言葉に、ルナは全てを悟った。
そうなのだ。
ここに来たのは、尊敬する司教様に清めてもらうためだったのだ。
母と同じように。
「はい、司教様・・・・」
ルナは素直な声で答えた。
マチルダとディオンも、笑みを浮かべて見守っている。