第五十三章 聖少女ルナ-3
母のようになりたい。
そんな想いを幼い頃から抱いてきたルナではあったが、自信がもてなかった。
特に少年が母を見つめる時の表情に出会う度、そこから逃げ出したい衝動に駆られるのだ。
そんな自分が嫌いだった。
これが大人になるという事なのか。
身体の変化が訪れるようになってから、ルナはこんな感情に悩む時が増えていった。
近づいてくる少年の顔を見つめるルナの心に、悲しい気持ちが覆っていた。
「ルナー・・・・」
ようやく追いついた少年だったが、少女の見つめる瞳に戸惑う自分を感じた。
金色の輝きが心に迫ってくる。
マチルダ王妃と同じだった。
どんなに喧嘩をしても、その瞳に見つめられると何もかも許せる気になる。
ルナと一緒にいるだけで、無上の喜びを感じる事が出来た。
「ルナ・・・・」
引き寄せられように近づいていく。
胸に熱く感情が込み上げてくる。
その瞳に見つめられると、何時もそうなってしまう。
この少女のためなら命を投げ出しても良いとさえ思えるのだ。