第四十章 正体-6
「ああっ・・はぁっ・・はぁっ・・・」
両腕は男の背中に力無く滑っていった。
まるで抱きしめるかの如く。
「いい子だ、マチルダ・・・」
男は、からかうように笑っている。
「ど、どうして・・・?」
マチルダの前に、あの男がいた。
司教様ではない。
薄汚れた髭を顔中に生やした、あの男の顔がマチルダを見つめながら笑っている。
「あんっ・・・・」
切ない刺激が突き上がる。
「い、いやぁ・・・」
それでも懸命に戦おうとしていた。
「どうしてあなたがっ・・・?」
男への恐怖が、僅かに残った理性を繋ぎとめている。
「お前が望んだ事じゃねえか・・・」
男は不敵に笑いながら突き上げる。