エロス短歌倶楽部の実態-5
雅美は驚いた、初めは彼の言っている意味がよく理解出来なかった。
すると何名かの拍手が起こった。
雅美は鷹森という男にその意味を聞いた。
「あ、あの……鷹森さん、性的な関係とは?」
「もちろん、会員同士で好きな時に、セックスをしてその思いを歌に託せば良いのですよ。
今、この場所でも良いですし、この近くのラブホテルでも構いませんがね、
それでなければ意味がないと思います」
突然の、彼の提案に皆、驚いていたが、意外とそれに賛成する中に女性がいた。
「あの、わたくしは蒼山美鈴と言います、主婦をしていますが、鷹森さんに賛成です。
だって会名が『エロス短歌倶楽部』でしょう、わたくしもそういうつもりですよ。
ウチの夫は、わたくしのセックスの相手をしてくれませんし、大賛成ですぅ」
そう言って、男性会員に色目を使った。
すると、別の男性が手を挙げた。
「あの、私からも……鷹森さんと蒼山さんに賛成です。
あ、失礼、名前は柳丸隆之介と言います。
この世の中は男性と女性しかいませんよね。
その両性が交わってこそ新しい愛が生まれます。
出会いとは、色々なケースがありますが、
こうして皆さんが集まったのも縁と言うものでしょう。
会員同士、はっきり言えば男女が交わってこそ、
本当のエロスの短歌が生まれると確信します。
それに参考までですが、
私はむかし或る雑誌社のルポライターをしていまして、
いわゆる風俗関係ですね。
色々な女性を取材しながら、経験もさせていただきました。
ソープランド嬢、ファッション・ヘルス嬢、SMサロン嬢などを取材しました。
その経験から言うと、ここにいる女性達にご満足頂けると思っています」
すると、女性達からは(凄い!)という声が上がった。
思わぬ展開に、主催者の綾川雅美は驚いていたが、
その気持ちは他の参加者達も同じだった。
雅美はそのような雰囲気を感じながら、
蒼山の隣に座っている京塚桃子に言った。
「自己紹介が思わない展開になってきました。
次に京塚桃子さんのお気持ちも聞いてみたいと思います。
京塚さん、どうでしょうか?」
その女性は周りを見ながら言った。
彼女は40代で、ぽっちゃりした身体をして弾けそうだった。
「はい、皆さんの熱い思いを聞いていて、わたしも大賛成です。
単なるセックスをするだけ……まあ、それもけっこうですが、
皆さんは『エロス』を短歌で極めると言う思いがありますよね。
例えば、この場所でわたしが男性とセックスをしたとして、
その方とのあいだで愛が芽生えれば素敵だと思います。
その愛を感じながら、「愛の短歌」を詠めば宜しいのでは。
こんなわたしでも交わりたいと思う男性がいれば良いのですが……」
京塚桃子は興奮しながら言った。
周りの雰囲気に飲まれてはいたが、その心は本心だった。
この歳でいまさら主人以外の男性とセックスが出来るとは思わなかったが、
会員の男性達とならそれが出来ると思うと、桃子は熱くなっていた。
桃子は夫が浮気をして、自分を愛さないことに不満を持っていたが
事情があり、離婚は出来ない。
その思いを、持て余していた豊満な身体で満たしたかった。
この会に入会したのも、「エロス」という会名であり、その期待感もあり、
まさに桃子の望む展開になりそうなのでドキドキとしていた。