第三十四章 僧侶と司教-4
『認めるんだ、マチルダ・・・お前は淫乱な女だ』
男の声が聞こえる。
しかしマチルダにはもう、それが怖く感じなかった。
潤んだ瞳を開けると僧侶が笑っていた。
マチルダの目には、幼い頃に信じていた清らかな誠実さが透き通って見えていた。
思い悩み壊れそうになっていた自分の心を、優しく包んでくれていると信じている。
そう、マチルダは気づいていない。
その瞳の奥に、邪悪に燃える欲望を。
泣きじゃくりながら始めた告白が、何時の間にか甘美な愛撫に咽ぶ切ない吐息に変わっている事も。
男の罠に操られ始めている事を。