第三十三章 罠-1
第三十三章 罠
「祈りなさい・・・」
微かに声が聞こえる。
司教様の声が遠ざかっていく。
ようやく辿りついた祈りの祭壇でマチルダは一心に祈るのだが、清らかな司教様の声が次第に弱くなっていくのである。
目を開けると、何時もの優しい笑みを浮かべたアズート司教が見つめていた。
今日は二人きりで祈りながら、清めてもらおうと思っていた。
全てを打ち明け、懺悔するのだ。
必ず司教様なら救って下さる。
マチルダは信じていた。
『お前は淫乱な女だ・・・』
「ひぃっ・・・」
だから再び目を閉じた瞬間に聞こえた男の言葉に、思わず叫んでしまった。
「どうされました、王妃様?」
司教は自分もひざまつき、マチルダの震える肩に手をかけた。
真青な顔でマチルダは荒い息を吐いていた。
そして再びその声が聞こえると、司教の胸に飛び込むようにして叫ぶのだった。
「いやっいやっ・・いやぁー・・・」