第三十三章 罠-4
「ううう、僧侶様ぁ・・・」
金色の瞳が光っている。
マチルダの心は恐怖から逃れるように少女に戻っていた。
そして、悩みの全てを打ち明けるのだった。
「あああ、うううー・・・わ、私ぃ」
午後の日差しが、聖堂の中を照らしていた。
マチルダの艶やかな髪を。
くびれたウエストを。
大きく丸みを帯びたヒップを。
それら一つ一つをなぞる男の目は次第に細く伸びていった。
薄暗い聖堂の中は静寂が支配していた。
微かに聞こえる王妃のすすり泣く声以外は。
建物の外では兵士が見張りをしていた。
王妃と司教以外、誰も入ってこれぬように。
聖堂の中は二人きりである。
止め処なく溢れ出る涙と共にマチルダから語られる話を優しい表情で聞いている。
全て司教が仕組んだ罠とも知らずに話すマチルダは長い不安から開放されたのか、時折嗚咽を上げながらも途切れ途切れに声を出すのだった。
それが新たなる運命の序章に過ぎないとは夢にも思っていなかった。