第三十二章 過ち-1
第三十二章 過ち
マチルダは祈る。
毎夜、苦しめられる夢を忘れるため。
毎朝、繰り返される過ちを悔いるため。
日毎変わっていく自分が怖かった。
『お前は淫乱な女だ・・・。』
そうかもしれない。
あんなおぞましい蛇達の愛撫を受け、感じていた。
喜びの声を上げていたのだ。
あってはならない事だ。
夢の中の出来事は自分の心の奥底にある想いなのか。
マチルダは否定したかった。
しかし、それ以上のおぞましい罪を自分で犯していたのだ。
あの男と交わるなどと。
想像の中であるが故、一層怖かった。
自分の意思で求めていたのだ。
もう、自分を苦しめる言葉を拒否する自信も、すでに消えてしまっていた。
(私は淫乱な女・・・)
心の中で呟いた言葉は波紋の如く広がっていく。
こんな時、愛する王がいてくれれば。
抱いて欲しかった。
力強い腕に抱きしめられ、犯して欲しい。
獣の如く貫いて欲しかった。
今なら拒否する事なく、何度となく甘美な官能の海を漂えるものを。
王はまだ遠征から帰って来ない。
日々、聖堂に通っては祈るしかなかった。
溢れ出る欲望に耐えながら。