第三十一章 動く指-1
「ああっ・・・・」
その事実がマチルダの心を駆り立てる。
感じていたのだ。
触れただけなのに飲み込むように滑っていく程、濡れているではないか。
『お前は淫乱な女だ・・・』
男の声が耳元に残っている。
「あっあっ・・・・」
直ぐに電流が走る。
おぞましい悪寒が熱い欲情となって、身体の奥底から湧き上がってくるのだ。
マチルダの指が動いていく。
自身の意思から離れ、別の生き物の如くマチルダの肌を辿っていった。
「あっ・・だ・・めぇ・・・」
これは現実の世界だ。
自分の意思で止められる筈ではないか。
それなのに。
微かに残る理性がマチルダの瞳を潤ませる。
長い睫毛が覆う目尻から金色の涙が、朝日を受けてキラリと光った。
「ああっ・・・あっ・・・」
それが諦めの合図なのか、マチルダの声が急に素直になっていった。
自分の濡れた熱い場所をなぞっていく。