第二十六章 祈り2-1
第二十六章 祈り2
「祈りなさい・・・・。
神は、いつもお側にいらっしゃいます」
節くれだった指が聖水を振り掛けると、マチルダは両腕の指を組みながらグリーンの髪に受けていた。
大きな瞳は長い睫毛のカーブを作り、閉じられている。
アズート司教は白いうなじから、ほのかに漂う甘い香りに酔いしれていた。
長い間追い求めていた獲物を遂に見つけたのだ。
美しく成長したマチルダは、女としての魅力をドレス越しに見せている。
(この胸は、どうだ・・・)
アズートは心の中で舌なめずりをする。
上から見下ろす胸の谷間から豊満な膨らみが覗き、妖しく息づいている。
(さあ、どう料理しようか・・・?)
瑞々しい唇から、透通った声が漏れてくる。
「はい、司教様・・・」
今、獲物は手の中にある。
見上げた顔が微笑んでいる。
(美しい・・・・)
アズートは、心からそう思った。
王妃の豪華な衣装をまとったマチルダに、あの日の少女の面影が重なる。
『お前は淫乱な女だ・・・』
細い手首を血に染まった手で掴みながら絞り出した言葉は、もう何年もの間、念じ続けてきた邪悪な欲望を表している。
この清楚で気品溢れる王妃を自分のものにするのだ。
そう考えただけで、アズートの心は熱くたぎり燃え上がるのだった。