第二十五章 飢饉-4
(すげぇ・・・いいぞぉ・・・
なんて、いい女になったんだ)
アズートは心の中で叫びながら、柔和な表情を崩さないよう必死に自分を抑制した。
「そうでしたか・・・
それは光栄なことです」
穏やかな声と話し方は、マチルダが幼い頃に慕っていた僧侶そのままだ。
王妃は皺がれた男の手を取り、強い口調で懇願した。
「お願いですっ・・・
どうか、我が国の司教として王宮に
来ていただけないでしょうか?」
マチルダは確信をもって男を誘った。
噂通り、男は怪我人や病気の人々を治していたのを目の当りにしたのだ。
この方を司教として王宮に向かえれば、きっと国は救われると思ったのだ。
「そ、それは・・・・」
「お願いですっ・・・
国王には私から推薦しますから・・・」
男の困惑する表情に必死になってマチルダは訴えた。
その口元が薄っすらと歪むのを気づきもしないで。