第二十五章 飢饉-2
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マチルダも共を連れて、国の人々に施しに廻ることにした。
その頃、ある僧侶の噂が広まっていた。
傷ついた人々に手をかざすと、たちまち回復し元気になったということだ。
枯れていた井戸から水が出たという話もあった。
王妃は噂を確かめることもかねて、街へ出ていったのだ。
人々が囲んでいるのを、街の片隅で見つけた。
ガヤガヤとした喧噪に混じり、記憶のある声が聞こえた。
「祈りなさい・・・
神は貴方に御加護をくださるでしょう」
マチルダの目は大きく開き、ジッと男を見つめた。
僧侶らしき姿をしているが、その服は汚れ、ボロボロにほつれていた。
それでも、薄っすら残る服の模様は記憶している物に重なる。
そして、男の表情も懐かしい顔であった。