第二十四章 不安-3
『お前は淫乱な女だ・・・』
マチルダの無垢な心はそのどす黒い欲望を敏感に受け止め、記憶の底に留めてしまった。
それ以来、何度も夢にみた。
余りにも邪悪な怨念は、マチルダの心に絡みついたまま中々消えようとはしなかった。
しかし脱出した者達と共に盗賊に襲われた時に、今の夫である王に助けてもらい、互いに愛するようになってマチルダは救われたのだ。
王の純粋で強い愛は邪悪な怨念を砕き、優しく包みこんでくれた。
「愛しているよ、マチルダ・・・」
王の清んだ瞳はマチルダを浄化してくれる。
「愛しています、アナタ・・・」
マチルダも心をこめて愛の言葉を返す。
だが、マチルダは恐れていた。
『お前は淫乱な女だ・・・』
男の呪いが、時おり心に蘇る。
本当に自分は淫乱な女ではないかと。
初めて王と交わった時の官能は忘れられなかった。
痛みはすぐに快感に変わり、強烈な欲望が身体中から溢れ出るようだった。
いくら愛する男に抱かれたからとはいえ、まだ十六才のマチルダは混乱するのだった。
懸命に声を出すのを耐えた。