第二十四章 不安-2
「お許し下さい、アナタ・・・。
愛しています、でも恐いの・・・。
こうして・・・こうして抱いていて
くれるだけで幸せなのです」
不思議な事に、金色に輝く瞳で見つめられると王は拒めなかった。
どんなに激しい欲情も、清らかに消されてしまうのだった。
王は何時までも変わる事のない自分の愛と妻の瞳に宿る貞淑な想いを感じると、優しくその細い肩を抱いてやるだけで我慢した。
時折でもいい、こうして愛おしい妻と甘美な交わりが出来るのだから。
そんな清楚な所が魅力で、王はマチルダを崇拝しているのだった。
眉をひそめた表情が又いい。
マチルダは王の逞しい腕の中で、官能に火照った身体を静めようと懸命であった。
貫かれた余韻が身体中を包み、熱いものがとめどなく奥底から溢れ出てくるのだ。
この頃、更に敏感になった気がする。
もう一度抱いて欲しい。
そんな欲望をかき消すように呟いた。
「不安なのです。何か胸騒ぎがして」
最近、夜毎うなされる日々が続いていた。
何か、邪悪な欲望のようなものが自分に襲いかかっている夢をみるのだ。
この感覚は以前にも感じた事がある。
そう、あれはジュームの国を出た日の事だった。
男を一人救った。
しかし男は邪悪な念波を送りながら、マチルダに淫らな言葉を投げたのだった。