第二十三章 王との出会い-3
「ウギャッー・・・」
イカヅチがアズートを襲う。
精霊達と一体となった僧侶の声が木霊する。
「魔物よ、お前達はいずれ滅ぼされるだろう。勇者によってな」
「ヒ、ヒイイー・・・」
魔物に二百年前の恐怖が蘇る。
融合している、もう一つの魂に向かって叫ぶ。
「に、逃げるのじゃ・・・アズートッ」
「おっ・・おうっ・・・」
アズートは咄嗟に水晶を掴むと懐に入れ、走り出した。
「まてっー・・・・」
精霊達の念波がイカヅチを繰り出すが、必死の魔物は何とか聖堂を抜け出した。
「ク、クソッ・・・
やっと人間に戻れたのに、
ここで死んでたまるかっ」
やけただれた顔を押えながら、僧侶の姿となったアズートは逃げていった。
魔物を仕留められなかったことに、精霊達は悔やんだ。
肉体を失った今では、追うことは不可能だった。
精霊達の魂は、聖堂に仕舞われている聖剣を離れることは出来ないからだ。
ジューム人の末裔であるマチルダに、災厄がかからなければいいのだが。
「待とう・・・勇者が現れるのを」
僧侶の魂は、そう言って闇の中へ消えていった。