第二十二章 消えた男-1
第二十二章 消えた男
僧侶が壁に埋め込まれたランプに火をつけると、聖堂の石の床が浮かび上がった。
所々目に付く染みを見つめながら、僧侶は感慨深気に見回すのだった。
もう何年になるだろうか。
今でも、あの日の喧騒が聞こえてきそうだ。
そして、今も謎に思うのだった。
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(幸せになるのだ、マチルダよ・・・。)
最愛の少女の面影を胸に残し、僧侶は聖堂への暗闇を歩いていた。
もう何十年も通った道は、目を閉じても歩ける程であった。
しかし僧侶は油断無く歩を進めている。
マチルダが助けた男が聖堂にいる筈だ。
邪悪な魂を宿しているという。
マチルダをあれ程怯えさせる位、強大な悪魔の心を持つ者だろう。
(早く行って、トドメをささねば)
いくら慈悲深い僧侶でも、そんな汚れた魂を神聖な聖堂に置きたくは無かった。