第二十一章 後悔-5
「僧侶様、ご無事でしたかー・・・?」
数人の村人が駆け寄ってきた。
どれもが傷をおっている。
「早く逃げて下さい、新しい兵士達がやってきます」
僧侶はマチルダの肩を両手で掴むと、言い聞かせるように言うのだった。
「さっ、この人達と逃げるのだ・・・。
神殿の裏道を抜けて逃げるがいい」
「僧侶様も御逃げ下さい」
老人の一人が言った言葉に、僧侶は笑顔を浮かべて答えた。
「私は残ります、御先祖様達と共に」
そして不安気に見つめる少女に、心の言葉で返していた。
(行きなさい、マチルダよ・・・。
そして忘れるのです、ジュームの全てを。
お前はここにいるべきではない。
幸せになるのです、外の世界で)
「さあ、マチルダを無事に」
そして老人達に預けると、神殿の中に消えていくのだった。
マチルダは叫んだ。
「僧侶様ぁ・・・」
(お前は優しい良い子だ、マチルダ)
聖堂の中の男とは反対に暖かく澄み切った心が伝わってくる。
(お前は幸せになれる、安心しなさい)
「僧侶様ぁ・・・」
何度も神殿を振り返り、少女は叫んでいた。