第二十一章 後悔-4
(アーハハハハー・・・)
あざけり声が魂を揺さぶる。
これ程の恐怖を感じたのは生まれて初めてであった。
汚れきった精神から放たれる、どす黒い欲望。
マチルダの目に出口の明かりが見えた。
やっと逃げられる。
助けるのではなかった。
暗闇から開放される。
少女の視界が白く染まった。
「しっかりするんだ、マチルダ」
気がつくと僧侶の腕の中にいた。
優しく暖かい物が心を包む。
マチルダが大好きな温もりだ。
「僧侶様・・・」
涙と汗でグッショリ濡れた顔を上げた少女は、途切れ途切れに僧侶に説明した。
「そうか・・・・」
僧侶は、金色に光ったマチルダの目を見つめながら優しくいった。
「かわいそうに、マチルダ」
少女は嗚咽を上げて想いを吐き出していく。
「その男の心が・・・私に、私に」
余程怖かったのか、肩を震わせて声を絞り出している。
「もう良い、お前は何も悪くない・・
忘れるのだ、マチルダよ」
僧侶の澄み切った念が、少女の心に粘りついた邪悪な欲望を消していく。
優しい腕に抱かれながら温もりを噛み締めていた。