第二十一章 後悔-3
「チ、チクショウ・・・」
男の呻き声をマチルダは闇の中で聞いた。
それが心の中での事とは気づいていない。
(淫乱なくせに・・・)
男のどす黒い邪念が追いかけてくる。
「イヤッ、イヤァ・・・」
振り切ろうとするのだが、粘りつくように離れない。
(男が欲しいんだろうが・・・。
気取るんじゃねぇ、メス犬がぁ)
欲望のパワーが押し寄せてくる。
マチルダの無垢な心を汚しに。
「イヤッー・・・」
(いつかキッと俺のものにしてやる・・。マチルダ・・・キッとだ)
両耳を押さえながら走る少女の瞳から涙が溢れていく。
出口までが、やけに長く感じた。
(お前は淫乱だ・・・)
男の執念深い声が、頭の中で鳴り続ける。
(いやらしい、メス犬なんだよ)
邪悪な怨念がマチルダを襲う。
(俺の女になるんだ・・・)
「イヤッ、イヤァー・・・」
声等聞こえる距離ではない筈なのに。