第二十一章 後悔-2
マチルダの瞳が涙で滲んでいく。
僧侶の教えを守って助けたのに。
優しさでは救えぬ男がいるのだろうか。
マチルダの瞳が輝き出した。
ほのかに金色を帯びている。
男の邪悪などす黒い欲望が少女の心に飛び込んでくる。
もう一方の手をマチルダの身体に伸ばす。
「や、やめなさい・・・」
怒りが込上げてくる。
村人を裏切ってまで助けたというのに。
「澄ましてんじゃねえよ・・・」
男の手が腰に触れた時、少女の髪が逆立った。
「ぎゃっ・・・・」
短い悲鳴を上げて男は手を放した。
素早く壁に飛び去ったマチルダは肩で息をしている。
手首にクッキリと、アザと血糊が付いていた。
金色の瞳が闇に浮かんでいる。
壁に飾られている聖剣もほのかに光る。
「な、何しやがる・・・」
男は脂汗を浮かべた顔を歪ませていた。
身構えていたマチルダはサッと身体を翻すと、聖堂を出て行った。
闇の中に少女のシルエットが消えていった。