第十九章 傷追い人-1
第十九章 傷追い人
それから10年後。
※※※※※※※※※※※※※※※
「い、いてぇ・・・・」
「シッ・・・もう少しの辛抱よっ」
薄暗い石畳で、男を引きずるように背負うマチルダは神に祈っていた。
(神様、ごめんなさい・・・)
神聖な聖堂を血で汚す罪を詫びるのだった。
優しい僧侶の顔が浮かぶ。
(良いではないか、マチルダよ・・・。どんな人にでも慈悲を持って接するのだ)
あの方ならキッと、そう言ってくれるだろう。
「いたかーっ・・・?」
遠くで声がする。
マチルダは重い足取りを急がせるのだった。
奥の聖堂には火がともっていた。
背中の男を床に下ろすとマチルダは力を使い果たしたのか、座り込んでしまった。
「うう・・・うっ・・・」
男は呻き声を上げた。
額からおびただしい血が流れている。
衣服も破れ傷口からも血が出ていた。
男を担ぎ引きずった跡が、石畳に赤くこびりついている。