第十八章 マチルダ-1
第十八章 マチルダ
ルナが覗く水晶に三十年前の風景が再現されていく。
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「キャーッ・・・・」
「待ってぇ、マチルダー・・・」
子供が走っている。
透通る声で笑いながら。
石畳が続く道を息を切らせ、登っていくと所々木々に覆われた神殿が現れた。
マチルダは幼い笑みを押し殺すようにして、朽ちかけた石門の影から来た道を見ていた。
かつて栄華を誇ったジューム国も、隣国との戦争などで疲弊し滅びようとしていた。
男達は戦い、多くが死んでいった。
女達も何度かの侵略で犯され連れ去られていき、残されたのは老人とわずかな子供しかいなかった。
マチルダを含め殆どの子供が親を失っていた。
ジュームの民は数少ない末裔達を共同で育てていたのである。
特に愛らしいマチルダは、みんなに可愛がられていた。