第十八章 マチルダ-2
「これ、そこに入ってはバチが当るぞよ」
見かけた老婆に止められるマチルダであったが、神殿から出てきた優しい僧侶の顔が出迎えた。
「よいよい、マチルダよ。お前も、ご先祖様を拝めてごらん」
マチルダはこの僧侶が好きだった。
いつも穏やかな笑顔で、子供達におもしろい話をしてくれる。
「うわぁー・・・」
初めて入る奥の聖堂を見上げながら、幼いマチルダは歓声を上げた。
礼拝の時でさえ、奥に入る事は許されなかったのである。
大人達でさえ、そうだった。
入れる資格を持つ者は、代々ジュームの神に仕える僧侶のみであった。
聖堂の中は壁に彫られた飾り窓に置かれた数本のろうそくの火で、ボンヤリと照らされていた。
夏だというのに肌寒く感じる。
珍しそうに辺りを見回すマチルダだったが、中央に飾ってある物に興味をしめした。