第十七章 祈り-5
「お母様・・・・」
ルナは再び祈った。
「教えて下さい、ルナはこれから、どう生きていけば宜しいのでしょうか?」
その声は空しく部屋に響き、消えていった。
五年の間、ずっとそうだったように。
ルナは力無く肩を落すと、母の手記を戸棚にしまった。
ふと、戸棚の奥にしまってあった箱に目が止まる。
ジュームの祈りの言葉で封印してある。
それは憎むべきアズートが操っていた水晶の玉であった。
何度か割ろうとしたがビクともせず、下手に埋めたり捨てたりしたらどんなタタリが起きるかもしれないので、ここに仕舞ってあったのだ。
ルナはそれを取り出してみた。
五年前、封印した時には何も映らなかった。
絹の布を丁寧にはがしていく。
透明な球にルナの瞳が映る。
気のせいか、球が徐々に輝きを増していくように見えた。
金色の光が部屋に広がっていく。
ルナの瞳が反応している。
薄闇の中で二つの光が浮かんでいる。
言い様の無い不安が込上げてくる。
五年前には何も変化しなかったのに。