第五章 ルナの魔力-2
「ウギャー・・・・」
男は顔を覆いながらうずくまった。
ルナは脂汗を滲ませ睨みつけている。
そして青ざめた唇を開いて声を出した。
「立つのです・・・・」
男はビクンと反応したかと思うと、虚ろな表情で立ち上がった。
「私の目を見るのです・・・」
ルナの両目が金色に光り、男に命令する。
「は・・・い・・・」
男は返事をした。
ヨダレが流れたままになっている。
しかし、ルナの瞳の光りが急に弱くなった。
「こ、このまま去って・・・」
ルナの言葉が弱々しく途切れていく。
金色の瞳が暗く沈んでいく。
男の表情が徐々に戻っていった。
虚ろだった瞳が大きく見開き、血走った目が薄闇に浮かぶ。
黄色く薄汚れた歯をむき出しにし、口を歪ませて笑い出した。
「へへへへへ・・・」
「き、きかない・・・・」
ルナの誤算だった。
妖術で男を操り、逃げようと思ったのに。