第三章 教会の番人-1
第三章 教会の番人
「おはよう、ドザリ・・・・」
「おはようございますだ。女王様・・・」
老人は心の底から畏敬の眼差しで、ルナを見ていた。
白髪に覆われた顔に両目だけが生き生きと光っていた。
ルナの姿を見るだけで生気が湧き上がってくるのだ。
国の民がルナに感じるように。
男の嬉しそうな表情を見る度にルナは胸を痛める。
(ごめんなさい、ドザリ・・・)
ルナは聖堂の扉の前で座る老人の手を取ると優しく言った。
「開けて下さいな、ドザリ・・・」
老人は目を輝かせて王女のために扉の鍵を取り出した。
聖堂を守って五年になる。
忌まわしい思い出の残る聖堂は閉ざされ、新しく大聖堂が建てられた。
一度は壊そうとも思ったが、職人が斧を振る内に頭痛や吐き気を感じ、ルナとディオンはあえて聖堂を残す事にした。
なまじ、アズートの呪いに触れぬ方が良いと考えたのだ。
その代わり聖堂の中心に聖剣を供え、呪いを封じると共に二人だけの戒めとして、時折こうして祈る事にしていたのだ。
父と母の冥福も。