第三章 教会の番人-2
ルナが礼拝に来る時だけがドザリの仕事だった。
ドザリはこのために生まれてきたのだと、心の底から思っている。
過去の記憶は全て忘れていた。
だが、そんな事はどうでも良かった。
王女の役にたてる事が無上の喜びだった。
聖堂の裏手の小屋に住み、毎日ルナを待つ。
小鳥と話をしながら過ごす平穏な日々を、心から楽しんでいるのだった。
白髪に埋もれた口から黄色の歯が覗いている。
薄汚れた獣臭い匂いが漂い、まとわりついてくる。
老人が支える扉をくぐる時、ルナの心は五年前に戻っていくのだった。
聖堂の闇にルナの瞳が金色に浮かんでいた。