マイ-1
1 マイ
―――――意識が戻りました。
「捕らえたぞ」 群衆の中の一人があたしの腕をつかみます。
「おまえはマイだな」
それを合図のように何人もの人たちが草刈り鎌や火かき棒、麺棒なんかを片手にあたしにつかみかかってきます。
「誰、胸にさわんないでよ」防ぐ腕をだれかに引っ張られます。 「髪もやめて」
胸元を引っ張り、スカートをめくり上げて、何人もの手が胸や腰をさわってきます。
ボタンがちぎれ飛びます。股のエッチなとこを狙ってわしづかみされてしまいます。
その手を振り払おうとしても、力で負けてしまいます。 「やめて、あたしが何したっていうの。わけわかんない」
母親が目の前で、「それを信じられたら、いいんだけどね。おまえが魔女だったなんて思わなかったよ」
「魔女ってなに。あたし何もしてない」周りを見ます。怖い顔がたくさんにらんできます。
「魔女だとはわかってるんだ」
「証言があるんだ、魔女め。かんねんしろ」 「いたぶって、はかせてやる」
他にも口々に叫ばれて、もう何を言っているのかよくわかりません。
「わけわかんない、順番に言って」やっとそれだけ叫びます。
「間違いない、マイは馬鹿だけど。それくらいわかる子よ。こいつは動揺してる。みんなはおまえが魔女だと言ってるだけよ。 何がわからないの」母親がつばを飛ばします。
「いっぺんにしゃべるからじゃない。あたし魔女なんかじゃない。あんたの娘でしょ」
「魔女は自分を魔女だとは言わないんだよ」
「すぐにわかるわ。魔女の判定よ」妙に高いトーンの、尖った女の声がして、後ろから髪を引っ張られました。
「髪はやめて」しゃくにさわるやつです。
何人もの男に村はずれまで引きずって行かれました。
後ろや横をついてくる野次馬が、どさくさまぎれに服を引っ張り、体中を触ります。
人の隙間から手だけを伸ばして、体をつねったり、たたくやつもいます。
低い橋の上につくと、ロープの端で両腕をくくられました。
長い方を持たれて、川に向かって立たされると、男が後ろから抱えます。
「さあ、どっちがいい、嫌なら飛び降りろ」 腹に回した手を上に滑らせると、胸にさわります。腰をおしりに押し付けて橋の縁に追い詰めました。
「むり。溺れちゃう」
「魔女は溺れない。 こいつはさわられる方が好きだそうだ」みんなに笑いながら、胸をねじりあげました。
「いやッ」体を前かがみにして、手からのがれようとした途端、落とされてしまいました。
水の中で、水面がどの方向にあるのかわかりません。
服が体にまとわりついて動きを妨害します。
何度も水を飲みながら、何とか体制を整えて顔を水面に出しました。
「たすけて」
「誰に助けを求めている」母親に棒でつつかれて沈められます。
「神さま」口が水面に出た時、なんとか叫びます。