第二章 アズートの呪い-5
「僕の命はもう、長くない・・・」
自分の身体を這うルナの手に重ねる。
「アズートの魔力でこんな身体になってしまった。
当然の報いかもしれない・・・。
君の母とあんな事に・・・。
ゴメンよ、ルナ・・・僕のせいで」
「違うわっ、私だって・・・」
ルナの言葉が途切れる。
「ルナ・・・」
涙に濡れる頬をなでながらディオンは続ける。
「でも、君だけは生きて欲しい・・・」
精一杯の力でルナの指を握る男の想いが伝わってくる。
「ディオン、ディオン・・・」
止め処なくあふれ出る金色の液体は、ディオンの腕を伝って床に落ちていった。
「今、人々を救えるのはルナ・・・
君だけなんだ」
ディオンはルナを抱き寄せた。
「ディオン・・・ディオンー・・・」
男の胸にルナの叫びは消えていく。
ディオンの優しい温もりがルナの絶望を溶かしていく。
「生きるんだ、ルナ・・・・」
細くなったディオンの両腕がルナの震える体を包んでいた。
闇の中でたった一つ残った愛の結晶が、微かに明かりをともすのだった。