第二十九章 アズートの呪い-2
ルナは天使の笑みを浮かべて頷いた。
こうするより他に二人の幸せはないだろう。
フト見ると、黒々としていたディオンの髪が真っ白になっていた。
アズートの呪いは本当だったのだ。
するとやはり自分の中には悪魔の呪いが植え付けられたのだ。
ルナはそう確信した。
(ウハハハハ・・その通りじゃ・・・)
「ええっ・・・?」
二人の頭の中におぞましい声が響いた。
アズートの声であった。
(俺は死んだが、呪いは残るぞ・・・。
ルナ、お前はもう男の生気無しでは生きられないのだ。
ディオンの髪を見ろ・・・。
お前と交わる男は、強烈に精気を吸い取られるのだ。
お前の父のようにな・・・。
俺が生きていればディオンを生かす方法も
あったのにな、ウハハハハ・・・。
お前への呪いは決して消えはしない・・・。
国中の男どもと交わらぬ限りはな。
死んだマチルダが羨ましいだろう・・・。
ウハハ、ワハハハハ・・・)
アズートの怨念は直ぐに消えていった。
「ルナッ・・・」
「ディオンッ・・・」
薄暗い聖堂の中で二人は震えながら、いつまでも抱き合うのであった。